映像って、何だ?
Prologue

映像が好きすぎて、時々「映像って何だ?」と考えます。
幼い頃 映画に出会い、今思えばその時から、映像が持つ独特で不思議な魔力に惹かれ続けてきました。
物語や登場人物よりも、それらと自分の間にある「映像」という何か得体の知れない存在に惹かれていました。
映画の別世界と、こちらの現実世界の間にあって、その架け橋となっている「映像」。
少し大袈裟ですが、「映像」にはこの世界の本質が詰まっているような気さえします。
四角形のフレームの中で動く、この不思議なものの正体は一体何なんだろう?
この個展では、自分にとって映像とは何なのかをゆっくり紐解いてゆき、4つの作品にまとめました。
僕が思う映像の魅力、ポテンシャルが最大限に発揮された「これが映像だ」と言えるものが作れたと思います。
01 : Life is Noise / Motion is Trust

僕にとって映像とは、コミュニケーションです。
映像は、動きます。
動くということは、そこには時間が流れています。
この映像は全てリアルタイムに生成されており、鑑賞者が触れると動き、それを見て鑑賞者もまた動きます。
そうしているうちに、まるで映像が意思を持っているかのような感覚が芽生えてきます。
自分が 今 生きているるように、向こうも 今 生きていて、何かを伝えてこようとしているのではないか。
映像と鑑賞者の間に信頼関係のようなものが生まれる瞬間です。
このコミュニケーションこそが、映像の独特な面白さです。
02 : Touching Space / Seeing Time

僕にとって映像とは、空間です。
プロジェクターで空間に光として出して初めて「映像だ」と言える感覚があります。
映像の力は、テレビやスマホのディスプレイの中ではなく、空間に出した時に最も発揮される。
それは空間を支配する力、もっと言えば、空間を操作する力です。
この作品では、鑑賞者が自ら歩き回ったり触れたりすることで、映像がダイナミックに変化します。
自分の動きが空間全体を操作しているような、不思議な感覚になります。
光と音によって空間を作り替えること。
それも僕にとっては広い意味での「映像」です。

03 : Your Projector / Our Narrative 

僕にとって映像とは、投影です。
映画館では、映像をプロジェクターでスクリーンという表面に投影しますが、これは比喩的だと感じます。
そこには監督や脚本家といった作り手の、想いや人生が投影されているからです。
映像を観ている鑑賞者も、そこに自分の想いや人生を投影して共感したりします。
映像は、一人ひとりが自分を投影できる表面なのです。
この作品では、プロジェクターによって投影された鑑賞者の「影」が映像作品と化します。
鑑賞者自身の投影によって作られる映像作品です。
また、ソーシャルディスタンスを取っていても、影ならスクリーンの表面で重なりあえます。
影と影を重ねたり、離したり、映像という表面を介した鑑賞者同士のコミュニケーションが生まれます。
04 : Digital Firework / Spirit Display

僕にとって映像とは、花火です。
近年 YouTubeやNetflixの台頭で、家族でテレビを観たり、映画を大勢の他人と一緒に観る機会が減ってきており、映像を観ることは小さな画面で一人でする体験になりつつあります。
でも、そうじゃないと思うんです。
映像は、みんなで観るから楽しい、花火のようなものだと思うのです。
一緒に観ることで感動を共有し、人と人の繋がりが深まることこそが、映像が持つ偉大なパワーです。
この作品では、鑑賞者の影から光の粉が生まれます。
誰もいないと真っ暗ですが、そこに鑑賞者が増えるほど、光も増えてゆきます。
みんなで体を動かし、光をかき回したり、せき止めたり、渡し合ったりして鑑賞できる、映像の花火です。
Epilogue

幼い頃から映画が大好きでしたが、同時に違和感も持っていました。
監督が完璧に作り上げた映像を 1時間も2時間も、暗いところでじっと座って観るのです。
なんだか一方的すぎる感じがします。
映像の本当の力が発揮されていないような気もしていました。
そんな時、インタラクティブアートというものを知って これだ! と思い、自ら作ってみることにしました。
今回の作品はどれも、鑑賞者が1人もいなくなると、動きが止まり沈黙します。作品が死ぬのです。
観る人がいるから、映像は生きて、観れる。
その関係はフェアで「映像的」だと思います。
ABOUT

2021年3月、渋谷で行った個展。
センサーとプログラミングを用いた、インタラクティブな映像作品を展示した。
壁3面へのプロジェクションと大音量のステレオサウンドで 光と音に満たされた空間を作り、鑑賞者はその中へ没入して体験する。
システムからビジュアルまで、全てopenFrameworksを使用したC++のコーディングで独自に開発した。
SYSTEM

使用したハードウェアは、Kinect 3台・MacBook Pro 2台・プロジェクター3台。
ソフトウェアは全てopenFrameworksを使用したC++のコーディングで独自に開発しました。
ソフトウェアの種類は「認識ソフト」「描画ソフト」「マッピングソフト」に分けられます。
認識ソフトはKinectのセンシングデータからタッチや人を認識します。
描画ソフトはその結果を元に3面分の映像をリアルタイムに描画します。
そして、マッピングソフトでプロジェクターへ送出、マッピングします。このプロセスは、有線LANで接続された2台のMacBook Proで手分けして行われます。
Original Softwares (openFrameworks)
System Diagram
Wiring Diagram
開発したコードを公開しています。(各リポジトリ内「src」をご覧下さい)
PROCESS
Conception
制作の初め、「映像」と聞いて連想される言葉をノートに書き出し、片っ端から印刷してカードにしました。
物理的な形に出せば、頭より手を動かして考えられます。
シャッフルしたり 並べたり グループ分けしながら、作品のコンセプトを組み立てていきました。
Visual Study
Visual Prototyping
ビジュアルは、可能な限りシンプルに、そして少しのノイズを入れることを意識しました。
複雑にしずぎると視覚に意識が向いてしまい、人との繋がりに対する感覚が霞みます。
主にグラフィック作品を参考にし、コーディングで作るからこそ出来る表現を追求しました。
Sound Production
映像の半分は音です。目で観て耳で聴いて、初めて完成する体験です。だから音にもこだわりました。
楽器や自然、日常の音をリアルタイムにミックスして鳴らしています。
組み合わせやエフェクトは毎回変わり、二度として同じ音は鳴りません。
映画やアート作品のサウンドを参考に、空間を支配するような音を目指してミックスしました。
System Sketch
System Development
Projector & Shadow Simulation
Kinect Simulation
タッチや人の位置認識には、「Kinect」というXbox 360用のセンサーを使いました。
10年以上前に発売されたもので性能が低いため、認識ソフトを賢くすることで補いました。
実験を繰り返し、配置やアルゴリズムを改良して性能を上げていきました。
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ロゴマーク、WEBサイトも自らデザインしました。
Logo
Website
DATA

What : 個展
When : 2021.03.28
Production : 6ヶ月
Hardware : MacBook Pro x2, Kinect for Xbox 360 x3, EB-W420(projector)x2, EB-W05(projector), iLoud Micro Monitor(speaker), WHR-1166DHP(router)
Software : Xcode, Illustrator, Photoshop, TCP Syphon & Many Original Softwares
Technology : openFrameworks, Syphon, OpenSound Control, OpenGL, OpenCV, OpenCL, Clipper, Box2d, LiquidFun, Bullet

Sound Design : Takuto Okamoto
System Development, Visual Design, Sound Mixing, Software & Hardware Engineering : Me
INSPIRED

SPIRIT

Christopher Nolan
Olafur Eliasson
星野源
奥山由之
真鍋大度
Porter Robinson
James Terrell
落合陽一
吉岡徳仁
Max Cooper

VISUAL

Olafur Eliasson
James Terrell
真鍋大度
MELT
Zach Lieberman
Memo Akten
Moment Factory
TeamLab
Porter Robinson
The 1975
中村勇吾
黒川良一
大黒デザイン研究室
北千住デザイン
牧野貴
井口皓太
SPIN
Maxime Causeret
Gene Kogan
Blair Neal
Arrival(film)
Interstellar(film)
海獣の子供(film)
Close Encounters of the Third Kind(film)
Annihilation(film)
Blade Runner 2049(film)
Lifelike(game)

SOUND

坂本龍一
山口一郎
Cornelius
Olafur Eliasson
Madeon
The 1975
millennium parade
End of the World
Tyler, The Creator
Porter Robinson
Tourist
TENET(film)
Arrival(film)
海獣の子供(film)
Interstellar(film)
Blade Runner 2049(film)
Midsommar(film)

SYSTEM

坂本龍一 × 真鍋大度 - Sensing Streams
Rhizomatiks - Border
Rhizomatiks - particles
TeamLab - Borderless
Toshiki Okamoto © 2021